タンパク質の機能に対する変異の影響の迅速な決定

sengenics社のフォーマットを用いた自己抗体探索アプリケーションのご紹介です。



DNAに生じる変異には、SNP、欠失、挿入、ドメイン交換、コピー数変異等があり、これらはタンパク質の安定性、酵素活性や他の分子との相互作用能力等様々な性質に影響を与えます。変異は疾病の発症や進展において大きな役割を果たすことがあります。

しかしながら、変異がタンパク質の構造や機能に与える影響は、タンパク質への網羅的な変異の導入とそれを用いた実験がコストが高く時間がかかるため、調査を行うことが困難です。さらに、同時に起こる複数の変異が引き起こすタンパク質の構造や安定性への影響を計測できる方法はほとんどありません。

従来の変異とタンパク質機能の関係を研究する方法としては、以下の方法が知られています。

  1. Newmannらは酵母sumoの構造と機能に及ぼす変異の影響を調査するため、合成遺伝子を使用した250種類以上の酵母SUMO(Smt3)の変異体アレルのライブラリを開発し、ハイスループット変異解析を実施しました。ライブラリは従来からのコロニー形成アッセイを利用してスクリーニングされ、個々の変異体はバーコード技術によって同定されました。45種類のsmt3変異体アレルが同定され、Smt3の網羅的な構造-機能マップの生成とバイアビリティや様々な細胞ストレスに対する応答に重要な役割を占める残基が同定されました。
  2. Uggentiらは市販薬4PBAを用いて、網膜症の原因となる4種類のbestrophin-1変異から野生型への機能の復帰がどのようにして起こるかを明らかにしました。同じチームによる以前の結果では、9種類のbestrophin-1変異体では野生型と比較してCl-コンダクタンスの減少がみられましたが、4PBAによる処理によって変異体の発現、局在および機能が回復しました。4PBAは様々な疾患においてタンパク質のフォールディングや機能の異常を長期間にわたり修正できる可能性があると結論付けられました。

Immunome技術は変異体の機能不全を改善する低分子化合物の評価を有用であり、治療薬の開発を促進します。この技術を利用することで、安価に、正確な結果をハイスループットで得ることができます。

ケーススタディ タンパク質マイクロアレイを利用したp53変異体の特性解析

ミニチュア版ImmunomeアレイCT100+アレイを用いた前立腺がんの自己抗体バイオマーカー探索 (Adeola, H, et. al., 2016)

この研究の目的は自然に発生するp53変異体におけるSNPの影響(酵素活性やアフィニティ)をハイスループットで評価することでした。

p53の各変異体の遺伝子は、HisタグおよびBCCPと融合した形でベクターにクローニングされ、発現後アレイ表面に固定化されました。

p53変異体マイクロアレイは次にCy-3ラベルGADD45プロモータオリゴとの結合によってDNAとの結合のアフィニティを評価され、MDM2との相互作用およびCKIIのリン酸化についても評価されました。

ほとんどの変異体でアフィニティの低下または欠失が観察されましたが、溶媒に露出している部位またはタンパク質-DNA相互作用領域から離れた部分に位置する残基の変異であるR181C/H、S227TおよびH233N/Dは例外でした。

R248Q/W、R273C/HおよびR280Kでは低いアフィニティが観察されましたが、これは特異的なタンパク質-DNA相互作用の欠如と立体障害のためと考えられました。

W23A/GにおいてMDM2の結合が弱まることが観察されましたが、これは変異によってタンパク質間相互作用に変化が生じたことを意味しています。

p53変異体間で機能にどのような差異があるか調べるため、CKIIによるp53のC末端に位置するS392に関するリン酸化が調べられました。

p53変異体はCKIIによってリン酸化され、そのリン酸化は抗リン酸化セリン392抗体によって検出されます。

リン酸化はL334P、392A(陰性コントロール)および変異Xを持つ変異体以外の全ての変異体で検出されました。

変異Xは様々な部位にストップコドンが導入されており、CKIIとの相互作用に必要なS392が欠失しています。このため、この変異を持つ変異体ではリン酸化は検出されません。

結論として、Immunomeプラットフォームを用いることで、GADD45やMDM2との結合能やリン酸化の減少が観測され、遺伝的な変異がタンパク質の構造や機能にどのような影響を与えるかについて有用な情報が得られることがわかりました。