概要
西洋ワサビペルオキシダーゼと並んで、アルカリホスファターゼ（AP）は最も頻繁に使用されるレポーター酵素の一つです。
ウェスタンブロット法もしくは組織染色を用いて蛋白質を、サザンブロット、ノーザンブロット法およびin
situハイブリダイゼーションを用いてDNAとRNAを同定するのに用いられます。
さらに、APの遺伝子phoA(大腸菌由来)は遺伝子制御を研究するためのレポーター遺伝子としてしばしば使用されます。
APは、タンパク質、ヌクレオチドおよびアルカロイドなどの多くの分子からリン酸基を除去する加水分解酵素です。
AP活性に非常に敏感な比色検出には、APの基質5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(5-Bromo-4-chloro-3-indolyl
phosphate, BCIP,
X-Phos)と酸化試薬ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(Nitro blue
tetrazolium chloride, NBT)の併用が有効です。
反応すると以下のような機構を経て深い青色の沈殿を生じます：
最近、Trinhと共同研究者は、呈色による染色に広く使用されているNBT/BCIPが蛍光分子でもあることを示しました。
蛍光法を用いると、共焦点レーザー走査顕微鏡のような光学切片を用いた技術と組み合わせたときに三次元でRNAへの転写を測定可能であるという利点があります(Trinh
et al., 2007)。
X-PhosもNBTなしで使用することができ、この場合最終的に酸素によって酸化されます。
あるいはX-Phosの代わりに、マゼンタ～紫に呈色するMagenta-Phosのご提供も可能です。
詳しくはお問い合わせください。
しばしば、BCIP/NBTを組み合わせた混合溶液は”ready-to-use”の溶液として購入されます。
この溶液は、Iris社の試薬からも自分で容易かつ安価に調製することができます。
▶ X-Phosストック溶液：0.5mgのX-Phosを10mLのDMFに溶解します。4 ℃で1年まで保存可能。
▶ NBTストック溶液：0.5 mgのNBTを70％DMF/30％水の溶液10 mL中に溶解します。4 ℃で1年まで保存可能。
▶ 基質溶液：66μLのNBTストック溶液と33μLのX-Phosストック溶液をご使用の緩衝液（一般的には0〜50mMのMgCl2、100mMのNaCl、100mMのTris/HClまたはpH 9.5のジエタノールアミン緩衝液)10mLに加えてよく混ぜ、1時間以内に使用します。
最終的な濃度はNBTが0.33 mg/ml、X-Phosが0.165mg/mLとなります。
表1. アルカリフォスファターゼ関連製品リスト
| コード |
製品名 |
分子式 |
CAS |
分子量 |
内容量 |
名称 |
| LS-3235.0001 |
Magenta-Phos |
C8H4BrClNNa2O4P*H2O |
404366-59-2 |
370.43*18.01 |
1g |
5-Bromo-6-chloro-3-indoxyl phosphate, disodium salt monohydrate |
| LS-3235.0005 |
Magenta-Phos |
C8H4BrClNNa2O4P*H2O |
404366-59-2 |
370.43*18.01 |
5g |
5-Bromo-6-chloro-3-indoxyl phosphate, disodium salt monohydrate |
| LS-3240.0025 |
NBT |
C40H30Cl2N10O6 |
298-83-9 |
817.64 |
2.5g |
3,3'-(3,3'-dimethoxybiphenyl-4,4'-diyl)bis(2-(4-nitrophenyl)-5-phenyl-2H-tetrazol-3-ium) chloride |
| LS-3240.0050 |
NBT |
C40H30Cl2N10O6 |
298-83-9 |
817.64 |
50g |
3,3'-(3,3'-dimethoxybiphenyl-4,4'-diyl)bis(2-(4-nitrophenyl)-5-phenyl-2H-tetrazol-3-ium) chloride |
| LS-3245.0005 |
X-Phos |
C8H4BrClNNa2O4P*1,5H2O |
102185-33-1 |
370.43*27.02 |
5g |
5-Bromo-4-chloro-3-indoxyl phosphate, disodium salt sesquihydrate |
| LS-3245.0010 |
X-Phos |
C8H4BrClNNa2O4P*1,5H2O |
102185-33-1 |
370.43*27.02 |
10g |
5-Bromo-4-chloro-3-indoxyl phosphate, disodium salt sesquihydrate |
| LS-3245.0025 |
X-Phos |
C8H4BrClNNa2O4P*1,5H2O |
102185-33-1 |
370.43*27.02 |
25g |
5-Bromo-4-chloro-3-indoxyl phosphate, disodium salt sesquihydrate |
参考文献：
▷ McGadey J., A tetrazolium method for non-specific alkaline phosphatase. Histochemie 1970; 23: 180-184.
▷ Blake M.S. et al., A rapid, sensitive method for detection of alkaline phosphatase-conjugated antibody on Western blots. Anal. Biochem. 1984; 136(1): 175-9.
▷ Trinh le A, et al., Fluorescent in situ hybridization employing the conventional NBT/BCIP chromogenic stain. BioTechniques 2007; 42(6): 756-9.