コンフォメーションエピトープの同定

抗CD20モノクローナル抗体である、抗体医薬Rituximabのコンフォメーションエピトープの同定を例に解説を行っております。



Rituximab のコンフォメーションエピトープマッピング

抗体医薬Rituximabは抗CD20モノクローナル抗体であり、CD20の細胞外ドメインをターゲットとしています。結晶構造解析の結果によると、RituximabはCD20の細胞外ドメインのループ部分に存在する15アミノ酸残基の配列NIYNCEPANPSEKNSPSTQYCYSIQと相互作用します。

真のコアとなるエピトープを同定するため、当該配列に基づいてデザインされたオーバーラッピングペプチドを配置したコンフォメーションエピトープおよび線形エピトープマイクロアレイが作製されました。コンフォメーションエピトープマッピングでは、様々なループサイズを試すため、7、10および13アミノ酸残基で構成されるペプチドが配置されました(1アミノ酸残基オフセット)。最終的には318種類のペプチドが配置され、FLAG(DYKDDDDKGG)およびHA(YPYDV-PDYAG)コントロールペプチドがフレームとして配置されました。

マイクロアレイは100μg/mlのRituximabとインキュベートし、ラベル済2次抗体および抗コントロールペプチド抗体で染色されました。線形エピトープではRituximabとの反応が検出されなかった一方、コンフォメーションエピトープでは反応が検出されました。

エピトープマッピングの結果として、コンセンサス配列EPANPSEKが得られました。また、ループのサイズが反応性に影響することも確認されました。7アミノ酸残基ペプチドとの反応が弱いことは、コンセンサス配列より短いことから説明が可能ですが、13アミノ酸残基ペプチドが10アミノ酸残基ペプチドより反応性が高いことは、この構造が天然のループ構造(15アミノ酸残基)をより忠実に模倣していることを反映していると考えられます。

出発配列中の酸化されやすいシステイン残基による影響を評価するため、元のシステイン残基を含む配列とセリンに置換した配列の比較が行われました。置換によって若干のシグナルの増大が見られましたが、大きな影響はありませんでした。