カスタム安定同位体ラベルタンパク質合成 (無細胞系)
Silantes社ではRiNAとのコラボレーションにより、2H、13Cおよび15Nの組み合わせでラベルされたタンパク質のカスタム合成を受託しております。
RiNAはタンパク質のin vitro合成の専門企業であり、Silantesは安定同位体ラベルした生体分子の合成の専門企業であり、この2社の協業により高品質かつ高純度の安定同位体ラベルタンパク質の提供が可能になりました。
合成方法
同位体ラベルタンパクは、転写や翻訳に必要な全ての要素を含む無細胞系を用いて合成されます。
これらの要素は大腸菌の破砕液から抽出・精製して作製されます。対象となるタンパク質をコードする遺伝子やラベルされたアミノ酸が反応液に添加されます。
合成されたラベル済みタンパク質は反応液から精製されます。
利点
無細胞系を利用する方法は、特に以下のような細胞を利用する方法が利用できないタンパク質の作製に場合にとくに有用です。
- 毒性のあるタンパク質
- 細胞を用いた方法ではインクルージョンボディ中に不溶性タンパク質として沈殿する場合
- 細胞内では分解反応を受けやすいタンパク質
また、無細胞系を用いたラベル済みタンパク質の作製は、以下のような点でNMRを用いた構造解析に有用です。
- 完全に安定同位体ラベルされたタンパク質を合成可能
- 1種類のアミノ酸のみラベルしたタンパク質の作製も可能
- 特定のアミノ酸のみラベルしたタンパク質の作製も可能
- NMRの測定に十分なmgオーダーの合成も可能
実施例 (安定同位体ラベルユビキチン)
StrepタグIIをC末端に保有する同位体ラベルヒトユビキチンが無細胞系を用いて合成されました。
- 13Cおよび15N(同位体純度98%以上)でラベルされたユビキチンの合成に成功
- Trp、AsnおよびGlnはラベルなし
- 精製はストレプトアビジンを用いたアフィニティークロマトグラフィーおよびゲルろ過の2段階で精製
- タンパク質の収量は2.5mg
- 収率は60%を達成
実施例 (その他の安定同位体ラベルタンパク質)
プロジェクトに必要な情報
合成の実施前に以下のデータが必要となります。
- 配列情報
- プロモータや抗生物質耐性遺伝子を含むプラスミドの情報
- 以下のようなタンパク質に関する情報
- サブユニット構成
- ジスルフィド結合
- 溶解度
- 安定性
- タンパク質自体の毒性
プロジェクトの進行
個々のタンパク質によって性質が異なり、またお客様のご要望に応じて様々な対応が可能です。
このため、必要な情報を頂いた後はお客様と随時討議させて頂きながら、以下のような手順でプロジェクトを実施致します。
- 発現に関する理論的な評価と無細胞系のセットアップ
- ラベル無し対象タンパク質の少量発現
- 同位体ラベルされた対象タンパク質の少量発現
- 少量での精製および特性解析
- 大スケール合成プランの立案とお客様へのご提案・ご討議
- 安定同位体ラベルタンパク質の大スケール合成
- 大スケール精製および特性解析