ProImmune社 アプリケーション例

ペンタマーによる染色手順や、SIV研究への利用、非特異的染色の除去など、アプリケーションのご紹介です。



ペンタマーによる染色の手順

SIV研究への利用

サルアレル用Pro5 クラスI ペンタマー

MHCクラスI拘束性CD8+ T細胞の応答は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染とサル免疫不全ウイルス(SIV)感染の両方でウイルス複製を制御するために重要な役割を果たしています。

サルとヒトのMHCクラスI分子はHIVおよびSIVのGagおよびEnvタンパク質の相同領域由来のペプチドに結合することが判明しているため、SIV感染に対するアカゲザルCD8+ T細胞の免疫応答を詳細に研究することは、HIV感染プロセスの理解とワクチン開発に役立ちます。

SIV研究を推進するため、ProImmune社ではフローサイトメトリーによってアカゲザルモデルで抗原特異的CD8+T細胞を検出、分離するためのサルアレルMamu-A*01およびMamu-A*02用Pro5 MHC クラスI ペンタマーを用意しております。

Pro5 ペンタマーを使用すると、一貫した結果が再現性高く得られ、エピトープの特徴を詳細に解析できるだけでなく、細胞内サイトカイン染色と組み合わせることで単一細胞レベルでも分析可能です。

実験データ

ProImmune社のMamu-A*01およびMamu-A*02 Pro5 ペンタマーの試験結果を示します。

米国ルイジアナ州コヴィントンにあるチュレーン国立霊長類研究センターのMarcelo Kuroda博士提供

前述の試験で使用されたPro5 ペンタマーは全て5~10営業日で英国から出荷可能なカタログ記載製品です。

また、Mamu-A*01またはMamu-A*02カスタムPro5ペンタマーを4~6週間で生産することも可能です。

ゲーティングによる非特異的染色の除去

非特異的染色の除去

フローサイトメトリーによる分析で標準的なMHCテトラマーやPro5 ペンタマーを使用した場合、生きたリンパ球集団を厳密に絞り込んでゲーティングしても非特異的なバックグラウンド染色がしばしば観測されます。

これはネズミ科のサンプルを使用する場合に特に問題になりますが、ヒト細胞でも問題になり得ます。

バックグラウンド染色の主な原因はB細胞やNK細胞の非特異的染色です。

非特異的染色が起こると結果の解釈が困難になり、本当に観測したいペンタマーの染色が見えにくくなります。

ペンタマーと抗CD8抗体による染色結果をプロットする際にはCD19陰性細胞と非NK細胞でゲーティングするために染色時に抗CD19抗体を添加することは不可欠であり、同時に抗NK抗体(抗CD49bまたは抗CD56抗体)を入れることも推奨されます。

特異的多重染色

複数の標識Pro5 MHC クラスI ペンタマーを用いた特異的多重染色

標識Pro5 ペンタマーで二重・三重に染色することで、複数のペンタマー特異性に基づいて単一ドナーサンプルを同時に染色・分析することが可能です。

これにより染色に要する細胞数を減らしながら詳細な免疫応答プロファイルの作成を進めることが出来ます。

R-PE標識、APC標識、ビオチン標識ペンタマーを自由に組み合わせてプロファイル作成に使用出来ます。

ここで示す例では健常人ドナー由来のPBMCを2種類の内在性ウイルス(インフルエンザ(flu)およびサイトメガロウイルス(CMV))に対する反応性でスクリーニングしました。

図4. 健常人ドナー由来のPBMCを3種類の標識Pro5 ペンタマーで三重染色した結果
図4. 健常人ドナー由来のPBMCを3種類の標識Pro5 ペンタマーで三重染色した結果

1×10^6個のPBMCを1試験分のR-PE標識A*02:01/GILGFVFLT(Flu)ペンタマーと1試験分のAPC標識B*07:02/TPRVTGGGAM(CMV)ペンタマーおよび1試験分のビオチン標識A*02:01/NLVPMVATV(CMV)ペンタマーを含むPro5ペンタマー混合液とともに室温(22℃)で10分間培養した(総容量50µL)。10倍量のバッファーで細胞を洗浄した後、遠心分離し(500×gで5分間)、1試験分の抗CD8 FITC(クローン LT8)とストレプトアビジン-PerCPとともに4℃で20分間培養した。細胞を再洗浄し、遠心分離後、固定してフローサイトメトリーで分析した。上の図は、生細胞の0.03%がA2/GIL特異的(a)、0.02%がA2/NLV特異的(b)、0.25%がB7/TPR特異的(c)であることを示している。1つのペプチドに対する染色度合に対して他のペプチドに対する染色度合をプロットした結果(d)~(f)から、特定のペプチドに対して特異的に結合する各細胞集団が相互に排他的であることがわかる。

サイトカイン染色との併用によるエフェクター機能の研究

Pro5 MHC クラスI ペンタマーと細胞内サイトカイン染色

Pro5 MHC クラスI ペンタマーと細胞内サイトカイン染色

Pro5 ペンタマーは主としてリンパ球の0.02%程度しかない希少な抗原特異的T細胞集団の検出と分離に使用されています。

ただし、抗原特異的T細胞は全てが機能的というわけではなく、機能的な細胞の比率には個体差や疾患による差異があります。

細胞内サイトカイン染色を追加すると、抗原特異的T細胞の免疫エフェクター機能を調べることが可能です。

サイトカインの産生は免疫応答において重要な役割を果たしています。

その例として、インターフェロンγ(IFNγ)による多数の抗ウイルスタンパク質の誘導、インターロイキン2によるT細胞の増殖誘導、腫瘍壊死因子αによるウイルス遺伝子の発現・複製の阻害が挙げられます。

サイトカインは常時発現している因子ではなく、刺激によって速やかに産生・分泌されます。

そのため、T細胞における細胞内サイトカイン染色の結果は、細胞内にサイトカインを保持しておくためのタンパク質輸送阻害剤存在下における細胞刺激であるかどうかによって変わってきます。

細胞を活性化してサイトカイン産生を誘起すると、一般的にはT細胞受容体の発現が減少します。

そのため、T細胞に関する複数の抗原特異性の同時検出が必要な場合には、細胞活性化の前にPro5 ペンタマーによる染色を行って良好な染色レベルを確保します。

ペンタマーはこの間にT細胞受容体とともに内在化されることもありますが、透過処理後の細胞でも検出可能です。

抗原特異的T細胞のエフェクター機能を分析するには、細胞をペンタマーで染色してから抗原で刺激します。

次いで細胞外エピトープ(CD8など)特異的抗体で染色し、その後膜透過処理と細胞内サイトカイン染色を行います。

Pro5 ペンタマーによる細胞内サイトカイン染色により、抗原刺激に正しく応答する抗原特異的CD8+ T細胞の比率を 決定可能です。

これにより、特異的免疫応答を監視できるだけではなく、様々な疾患に関する応答の基本的な差異を理解することが可能になります。

  • a. 目的細胞に特異的なペンタマーB*08:01/RAKでPBMCを染色後、ブレフェルジンAの存在下で16時間、PMAとイオノマイシンで刺激した(非特異的活性化)。
  • b. 目的細胞に特異的なペンタマーB*08:01/RAKでPBMCを染色した後、ブレフェルジンAのみが存在する条件下で16時間培養した。
  • c. 陰性対照(非特異的)ペンタマーA*02:01/GLCでPBMCを染色した後、ブレフェルジンAの存在下で16時間、RAKFKQLLペプチドとともに培養した(特異的ペプチド活性化)。
  • d. 目的細胞特異的ペンタマーB*08:01/RAKでPBMCを染色後、ブレフェルジンAの存在下で16時間、RAKFKQLLペプチドとともに培養した(特異的ペプチド活性化)。

磁気ビーズとの併用によるT細胞の濃縮

Pro5 MHC クラスI ペンタマーと磁気ビーズの併用による抗原特異的T細胞の濃縮

Pro5 ペンタマーを磁気ビーズと併用することにより、抗原特異的T細胞の検出だけでなく、目的T細胞集団を濃縮・除去することが可能となります。

抗原特異的T細胞の濃縮や除去を必要とする用途では、磁気ビーズによる細胞選別がシンプルな解決法を提供します。

このようなニーズのある用途としては、治療薬開発、T細胞の株化、PCRクローニング、遺伝子プロファイリングや細胞培養実験などがあります。

また、蛍光細胞分析分離装置(FACS)の予備的濃縮ステップとして磁気ビーズによる選別を利用することにより、選別する細胞数を減少させることが可能となり、必要な時間を短縮可能です。

現在の磁気ビーズによる分離技術としてはFigure 6.54のようなカラム法とチューブ法の2種類が主流になっています。

カラム法では強力な永久磁石の磁場内に置かれた分離カラムに細胞-ビーズ複合体を通過させます。

ビーズに結合した細胞はカラム充填剤に保持され、非標識細胞はそのままカラムを通過します。

磁場の影響下からカラムを脱することにより、保持されている細胞を溶出します。

Figure 6.55にカラム分離法による実験を図示します。

チューブ法では外部磁石を使用して細胞-ビーズ複合体をチューブ内壁に引きつけ、上清を除去して細胞懸濁液から複合体を分離します。

磁場からチューブを取り出すことにより、細胞-ビーズ複合体を再懸濁することが可能です。

下記にチューブ分離法による実験を図示します。

図7. カラム磁気分離法による末梢血細胞(PBMC)からの抗原特異的T細胞の濃縮実験
図7. カラム磁気分離法による末梢血細胞(PBMC)からの抗原特異的T細胞の濃縮実験

1×10^7のPBMCを5試験分(50µL)のR-PE標識ペンタマーとともに室温(22℃)で10分間培養した後、4℃で15分間、20µ;Lの抗R-PEマイクロビーズ(Miltenyi Biotech社)とともに培養した。MidiMACSシステムを使用して細胞をMSカラムを通過させ、流出画分を廃棄した。次にカラムを磁場から外し、保持されている標的細胞を陽性画分として溶出した(陽性画分1)。さらに細胞を第2のMSカラムに通し、目的の抗原特異的T細胞(陽性画分2)を濃縮した。得られた細胞は氷上で20分間、抗CD8抗体と培養した後、固定してフローサイトメトリーで分析した。(Miltenyiマイクロビーズはサイズが小さいため、ビーズがついたままフローサイトメトリーで分析されることがある)

FACSによるT細胞の分離

蛍光細胞分析分離装置

Pro5 ペンタマー陽性生細胞はFACS装置を用いた操作により、選択的に回収することが可能です。

この場合、ペンタマー溶液中の保存用試薬である塩化アジドを除去する必要があります。

このためには、遠心濃縮キットを使用して事前に除去するか、ペンタマーのご発注時に塩化アジド除去をご用命下さい。

ご自分で処理される場合は、PBSで最大容量まで希釈し、元の容量まで濃縮作業を行って下さい。

希釈-濃縮作業は塩化アジドが十分希釈されるまで、2~3回繰り返して下さい。

塩化アジドを除去しない場合、細胞が死滅します。

FACS用染色に関する手順はフローサイトメトリー分析と同様です。

ただし、大多数の細胞を染色できるよう、ペンタマー試薬の量を調節する必要はあります。

例えば1試験用の標識ペンタマーは1~2×106細胞程度の染色を行うには充分ですが、1×107細胞を染色しようとする場合、5~10試験分のペンタマーが必要です。

同様に、抗体の量も細胞数に合わせて増量する必要があります。

染色後は細胞を固定せず、出来るだけ速く選別を行います。

大量の細胞を選別する必要がある場合バッファーにDNaseを加えて作業中は冷蔵しておくことで、細胞の凝集を防止することが可能です。

(注) 選別後のゲートは選別前のゲートの値より低く設定されています。これは選別中にレーザーにより標識細胞のR-PE蛍光強度が消光されたためです。

組織染色への応用

抗原特異的T細胞のin situ分析

免疫応答の動的な特性についての知見の多くはMHC多量体技術を利用して得られています。

抗原特異的T細胞の可視化 を直接的にその場で行えるため、各種免疫応答の間の関係を時間的、空間的により詳細に理解できるようになりました。

Pro5 MHCクラスIペンタマーを使用すると、リンパ器官や末梢神経、浸潤腫瘍組織から採取した組織切片を染色可能です。

蛍光抗CD8抗体と蛍光Pro5 ペンタマーによる二重染色を行うことで、蛍光顕微鏡を用いて抗原特異的T細胞を観測することが可能です。

ワクチンと免疫療法の開発

Pro5 MHC クラスI ペンタマーを使用すると、フローサイトメトリーで抗原特異的T細胞の応答レベルを正確に定量することにより、免疫療法やワクチンの作用機序を分析することが可能です。

ProImmune社では、各種カタログ試薬、カスタム試薬の提供を通じて研究の成功をサポートします。

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