KaLy-Cell社 薬物相互作用評価試験

KaLy-Cell社の高品質凍結肝細胞製品を使用した薬物相互作用評価試験のご紹介です。



酵素誘導

酵素誘導は併用して用いられる薬剤の代謝クリアランスを増加させ有効性を低下させます。その結果、併用療法の効果も低下します。FDAをはじめとする規制当局は酵素誘導は薬剤間相互作用の潜在的な要因と認識しています。

KaLy-Cellの酵素誘導試験は薬剤候補化合物による薬物代謝酵素の発現上昇を評価します。この試験は2種類のカテゴリーに分けられます。

  • プライマリ肝細胞を用いて実施される薬剤候補化合物による in vitro 酵素誘導試験
  • 薬剤を投与された動物由来の肝マイクロソームを用い、陽性対象化合物との酵素活性の比較を行う Ex vivo 試験

in vitro 酵素誘導

KaLy-Cellはヒト肝細胞を用いた in vitro 酵素誘導試験(FDAのゴールドスタンダードです)のエキスパートであり、FDAの推奨に準拠して実施しています。

酵素誘導は遺伝子発現の変動(qRT-PCRによるmRNAレベルの測定)または酵素活性の変動を肝細胞の in situ 分析または培養肝細胞由来マイクロソームの分析によって決定します。新鮮または凍結接着可能肝細胞を使用して試験を行います。

この2種類の細胞では誘導薬に対する反応性に大きな差がないことがKaLy-Cellの研究者の研究によって明らかになっています(Alexandre et al., 2012)。

さらにKaLy-Cellは新しい試験ガイドラインの確立を目的としてOECDに提出するためのSPSF(Standard Project Submission Form)に記載するために実施されている、薬剤のシトクロームP450誘導性を測定することによって肝臓における代謝産物生成および毒性の予測を行う試験系の施設間差のバリデーションにも参加しております(Abadie-Viollon et al., 2010; Richert et al., 2010)。

薬剤開発における酵素誘導試験

KaLy-Cellの標準的なアプローチは3ドナー由来のヒト肝臓からの肝細胞を用い、2または3日間で3種類以上の濃度の薬剤濃度(可能な場合は最大血漿Cmaxの10倍まで)で適当な陽性対象(β-naphthoflavone、phenobarbital、rifampin)と測定するものです。

細胞の形態変化とresazurinからresorufinへの変換が細胞毒性の指標として用いられます。CYP酵素(少なくともCYP1A2、CYP2B6、CYP3A4)、UGTおよびトランスポーター(例:P-glycoprotein)の発現変動はqRT-PCRを用いてmRNAレベルで測定されます。以下に記載される通り、酵素活性は in situ 測定または肝細胞から調整されたマイクロソームで測定されます。

肝細胞中の酵素活性の in situ 測定:CYP活性の薬剤投与による変動はin situで評価可能です。この方法を採用することで、活性のデータを迅速にかつ安価に取得できます。KaLy-Cellではこの方法で得られた結果を、mRNAレベルでの発現結果の解釈のための補助的な情報として使用することを推奨しております。

マイクロソーム中の酵素活性測定: 肝細胞から調製されたマイクロソームは各種CYPおよびUGTの酵素活性の測定に使用可能なだけではなく、メカニズムを調べる際に補助的役割を果たすウェスタンブロットによる解析にも使用可能です(例えばCYP3A4のような酵素の誘導が非可逆的な阻害によってマスクされているケースを特定したり、酵素活性の低下が酵素の阻害によるものか発現抑制によるものかを識別したりする場合)。mRNAレベルでの解析からもメカニズムに関する類似の情報を得ることができます。

マイクロソームを使用した酵素活性試験の優位な点は最初の解析が例えばCYP1A2、CYP2B6、CYP3A4に関してのみ実施された場合でも、FDAからの追加の試験、例えばCYP2Cに関する試験の要求に対して新たに肝細胞を培養することなく追加試験を実施可能であることが挙げられます。凍結保存されたマイクロソームを利用することで、結果に大きな影響を与えることなく後に追加の酵素活性の測定を行うことが可能です。


表1. in vitro 酵素誘導アッセイ
項目名 内容
化合物濃度 0、0.1、0.25、1、2.5、10、25μM (異なる濃度も可能)
CYPアイソフォーム CYP1A、CYP2B、CYP2C、CYP2D6、CYP3A4(ほかのアイソフォームも可能)
必要組織量 評価対象アイソフォームの数によって異なります
対照試料 既知の各アイソフォームの誘導薬
分析方法 LC-MS/MS
アウトプット

誘導指数(陰性対象の場合に対する発現量の倍数)

陽性対象の場合に対する発現量の割合

EC50およびEmax算出モデル

評価システム

KaLy-Cellは以下の様なin vitro評価システムを用いた酵素誘導評価を実施可能です。

  • 新鮮接着可能ヒト肝細胞(マイクロソーム中または in situ での分析)
  • 凍結接着可能ヒト肝細胞(マイクロソーム中または in situ での分析)
  • CYPに関してバリデーション済みのLC-MS/MS

表2. 対照試料
アイソフォーム 基質 誘導薬 マーカー代謝物
CYP1A2 Phenacetin β-Naphthoflavone Acetaminophen
CYP2B6 Bupropion Phenobarbital Hydroxy-bupropion
CYP2C8 Paclitaxel Rifampin 6α-Hydroxy-paclitaxel
CYP2C9 Diclofenac Rifampin 4'-hydroxy-diclofenac
CYP2D6 Buferalol β-Naphthoflavone Hydroxy-bufuralol
CYP3A4 Midazolam β-Naphthoflavone 1’-hydroxy-midazolam

適切な陰性および陽性対照(既知の誘導薬)は観測される薬剤による酵素誘導の効率を客観的に評価するためにすべての酵素誘導試験で利用されています。

Ex vivo 酵素誘導

ラット、マウス、イヌ、サルを用いたEx vivo酵素誘導試験は薬剤候補化合物に関して、例えば酵素誘導性等の有益な情報を得るために利用できます。また、得られたデータは臨床薬物間相互作用試験のデザインや薬物間相互作用のマグニチュードを推定するためにも使用できます。

  • Phase IおよびPhase II薬物代謝パスウェイと自己誘導
  • エピジェネティックながん形成
  • ヒト臨床に近い毒性
  • 薬物間相互作用
  • 薬物動態

表3. ex vivo 酵素誘導アッセイの内容
項目名 内容
CYPアイソフォーム CYP1A、CYP2B、CYP2C、CYP2D6、CYP3A4(ほかのアイソフォームも可能)
必要組織量 評価対象アイソフォームの数によって異なります
対照試料

熱不活化マイクロソーム

基質非存在下マイクロソーム

β-NAPDPH非存在下マイクロソーム

分析方法 LC-MS/MS
アウトプット 陰性対象の場合に対する発現量の倍数、統計分析

評価システム

薬剤処理された組織から調製したマイクロソーム

分析

  • バリデーション済LC-MS/MS
  • ハイスループットAgilent社オートサンプラー
  • 内部標準を用いた解析

酵素阻害

シトクロームP450は薬剤の代謝に重要な役割を果たす酵素ファミリーです。併用投与の際に片方または両方の薬剤が相手方の代謝を阻害する可能性があるため、特定のシトクロームP450に対する薬剤による阻害を評価することは重要です。阻害によって生体内で血漿中の薬剤濃度が影響を受けたり、副作用が生じる可能性があります。

シトクロームP450阻害アッセイのためにKaLy-Cellでは凍結肝細胞と広く一般に受け入れられているプローブ化合物を使用しています。陰性対照と比較した場合のプローブ化合物の代謝物形成量の減少をもとにIC50の計算が行われます。

可逆的酵素阻害

標準では7種類のP450アイソフォーム(CYP1A、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYO2C19、CYP2D6、CYP3A4。ご要望に応じ他のアイソフォームでも実施可能です。)の阻害効果がKaLy-Cellの実施するアッセイで評価されます。アイソフォーム特異的な基質がヒト浮遊肝細胞培養系に対して個々に様々な濃度(一般的には0.1~25μM)で添加されます。培養の終了時に代謝物の形成がLC-MS/MSで測定されます。

陰性対照と比較した場合のプローブ化合物の代謝物形成量の減少をもとにIC50の計算が行われます。IC50の決定に引き続き、特定のアイソフォームに対する化合物のKiを決定します。Kiは阻害の強さや阻害の形式(競合的、非競合的または混合)に関する情報を与えます。Ki値はまた in vivo での潜在的薬物間相互作用の影響について推定するためにも利用されます。
個々のアイソフォームアッセイに関して特定の既知の陽性対照を使用して試験を行います。


表4. 可逆的酵素阻害アッセイの内容
項目名 内容
化合物濃度 0、0.1、0.25、1、2.5、10、25μM (異なる濃度も可能)
CYPアイソフォーム CYP1A、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4(ほかのアイソフォームも可能)
化合物の必要量 評価対象アイソフォームの数によって異なります
陽性対照 既知の各アイソフォームの阻害剤
分析方法 LC-MS/MS
アウトプット

誘導指数(陰性対象の場合に対する発現量の倍数)

陽性対象の場合に対する発現量の割合

EC50およびEmax算出モデル


表5. 基質および対照試料
項目名 内容
化合物濃度 0、0.1、0.25、1、2.5、10、25μM (異なる濃度も可能)
CYPアイソフォーム CYP1A、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4(ほかのアイソフォームも可能)
化合物の必要量 評価対象アイソフォームの数によって異なります
陽性対照 既知の各アイソフォームの阻害剤
分析方法 LC-MS/MS
アウトプット

誘導指数(陰性対象の場合に対する発現量の倍数)

陽性対象の場合に対する発現量の割合

EC50およびEmax算出モデル

経時的酵素阻害

CYPの阻害は薬物間相互作用の最もよく起こる原因の一つです。阻害は可逆的、半可逆的および不可逆的のいずれのメカニズムでも起こり得ます。

薬物相互作用に関するFDAのドラフトガイドライン(2012)およびEMAの薬物相互作用試験に関するガイダンス(2012修正)では薬剤の経時的な阻害を調べることが推奨されています。

kinact/KIアッセイでは経時的な阻害の速度定数を決定します。kinactは阻害剤の飽和濃度での酵素不活化に関する最大速度であり、KIは最大の50%の不活化速度を与える阻害剤濃度を示します。実験条件は別途行われる、例えばP450可逆的阻害アッセイやIC50シフトの結果をもとに決定されます。

測定では、ヒト浮遊肝細胞を用いて、不活化が起こらない条件から最大の不活化が起こる条件まで網羅するため、7種類の評価対象化合物濃度(化合物添加無しを含む)で6つの異なる添加後培養時間(開始時を含む)における阻害を評価します。

その後、個々のアイソフォームに対するプローブ化合物を含んだバッファー(5×Km濃度)で希釈し、培養を行います。残存活性%の対数と評価対象化合物との培養時間を直線で近似した際の傾きを算出するために最小二乗法で回帰分析を行い、その後阻害剤濃度に対する傾きの関係を非線形回帰分析で決定することによってkinactとKIが算出できます。


表6. 経時的酵素阻害アッセイの内容
項目名 内容
化合物濃度 8種類(化合物不含条件を含む)
化合物暴露時間 6種類(開始時点を含む)
CYPアイソフォーム CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4(ほかのアイソフォームも可能)
試験システム 浮遊培養凍結ヒト肝細胞
測定回数 3回
分析方法 LC-MS/MS
アウトプット KIおよびkinact

表7. 経時的酵素阻害アッセイにて使用する基質
アイソフォーム 基質
CYP1A2 Phenacetin
CYP2B6 Bupropion
CYP2C8 Paclitaxel
CYP2C9 Diclofenac
CYP2C19 S-mephenytoin
CYP2D6 Buferalol
CYP3A4 Midazolam
CYP3A4 Testosterone