アミノ酸置換スキャンによるRituximabのコンフォメーションエピトープのバリデーション
抗体医薬Rituximabは抗CD20モノクローナル抗体であり、CD20の細胞外ドメインをターゲットとしています。結晶構造解析の結果によると、RituximabはCD20の細胞外ドメインのループ部分に存在する15アミノ酸残基の配列NIYNCEPANPSEKNSPSTQYCYSIQと相互作用します。
真のコアとなるエピトープを同定するため、当該配列に基づいてデザインされたオーバーラッピングペプチドを配置したコンフォメーションエピトープマイクロアレイが作製されました。エピトープマッピングの結果として、コンセンサス配列EPANPSEKが得られました。
さらに詳細なエピトープに関する情報を得るため、CD20の細胞外ドメイン由来の配列1NIYNCEPANPSEK13の各位置のアミノ酸残基を他の19種類の標準アミノ酸で置換した1
アミノ酸残基置換スキャンが実施されました。
9N、10Pおよび11Sは高度に保存的であり、どのアミノ酸残基に置換してもほぼ完全にRituximabとの結合能を喪失しました。
6E、7P、8A、12Eは次に保存的であり、どのアミノ酸残基への置換においても50%以上の結合能の喪失を示しました。
13Kはほとんどのアミノ酸残基への置換で50%以上の結合能の喪失を示しましたが、Rへの置換では大きな結合能の喪失は示しませんでした。エピトープマッピングで同定された6EPANPSEK13の全体にわたり、配列が保存的であることがこれによって示されました。
これに対し、N末端側の配列1NIYNC5ではアミノ酸残基の置換は50%以下の結合能の喪失または結合能の増大を示しました。
これらを総合すると、6EPANPSEK13が真のエピトープである可能性が高いことが示唆されます。
置換スキャンの結果は保存的配列および非保存的配列を識別することによるエピトープのバリデーションの他、変異による結合性の変化を評価することにも利用できます。これによって、患者集団を遺伝的要因でグループ分けし、レスポンダーとノンレスポンダーの予測やリスク評価等に活用できます。
また、様々なペプチド配列と抗体との結合性に関する評価データを得ることができるため、in silico での交差反応性予測に関する有用なデータとして活用することも可能です。