高分解能vs低分解能エピトープマッピング比較
通常のエピトープマッピングでは先にペプチドを合成し、これをマイクロアレイ上にスポッティングして固定します。この方法では合成コストが高く、またスポットの密度が低くなるため、通常エピトープマッピングの際のオーバーラッピングペプチドは4~5アミノ酸ずつオフセットしたペプチドで構成されます。
これに対し、PEPperCHIP™
ペプチドマイクロアレイを用いることで、同等以下のコストで1
残基オフセットオーバーラッピングペプチドを1枚のマイクロアレイ上に合成し、エピトープマッピングを行うことが可能です。
15アミノ酸残基のペプチドを用いたエピトープマッピングの比較。PEPperMAP™
エピトープマッピングで採用されている1アミノ酸残基オフセットの場合(上)
とオーバーラップ部分を減らした4アミノ酸残基オフセットの場合 (下)
を図示した。図では8アミノ酸残基からなるエピトープ(赤破線内)を仮定しており、これは1アミノ酸残基オフセットの場合は8
種類のペプチドに含まれている(オレンジ部分)。これに対し4アミノ酸残基オフセットの場合は2種類のペプチドにのみ含まれている。
上図で示されているオーバーラッピングペプチドの場合、8アミノ酸残基と仮定されているエピトープは、1アミノ酸残基オフセットでは8種類のペプチドに含まれています(
上部のオレンジ箱内) が、4
アミノ酸残基オフセットの場合、2種類のペプチドにのみ含まれます(下部のオレンジ箱内)。両方のペプチドともエピトープを内部に含み、明確な境界が判明しません。
PEPperCHIP™
ペプチドマイクロアレイを用いた高分解能エピトープマッピングは以下の様な点で優れています。
▶ エピトープのコア部分を正確に同定できます
▶ エピトープの長さに関して詳細な解析が可能です
▶
ポリクローナル抗体を含むサンプルを用いた場合でも明確に隣接エピトープを分離可能です
▶ 真のエピトープを非特異的なバインダーと識別できます
CENPA抗原を用いた高分解能vs低分解能エピトープマッピング比較
低分解能(4アミノ酸残基オフセット) と高分解能(1アミノ酸残基オフセット)
によるエピトープマッピングの結果を比較するため、140アミノ酸から構成される抗原CENPA由来のオーバーラッピングペプチドを用いたエピトープマッピングが実施されました。末端にエピトープが位置する可能性も考慮し、抗原のN-およびC-末端にはGSリンカー(GSGSGSG)
が付加されました。
ペプチドマイクロアレイはヒト血清SSc1(1:5,000)とインキュベート後、2次抗体で染色され、データが取得されました。HAおよびFLAGタグに対する染色によってアレイの境界が明確化され、同時に正常に染色されていることが確認されています。
どちらのマイクロアレイを用いた場合でも、上図の通り強く明瞭なシグナルが得られました。
マイクロアレイのスキャン結果を蛍光強度プロットに変換した結果が以下で比較されています。
高分解能エピトープマッピングの場合、蛍光強度プロットの結果はN
末端に位置するCENPA
エピトープであるPTPTPGPSおよびRGPSLGASが明瞭に分離して観測されました(
左)。
これに対して低分解能エピトープマッピングの場合、曲線の形状から2種類のエピトープの存在が示唆されるものの、明確に分離することができず、エピトープのコンセンサス配列としてはPTPのみが同定されました。
血清SSc1に対して15残基のCENPA
由来オーバーラッピングペプチド(1残基オフセット;左
および4残基オフセット;右)が強く反応している。1
残基オフセット(高分解能)では明確にN末端付近の2種類のエピトープが分離されているが、4残基オフセット(低分解能)では2種類のエピトープが分離できていない。