Rho1D4タグとは

Rho1D4はウシロドプシンの細胞内C末端9残基の配列の名称です。この名称はこの配列特異的に結合するモノクローナル抗体に由来します。

Rho1D4抗体との組み合わせることにより、この配列は膜タンパク質の精製に最適な非常に特異的な精製用タグとして使用することが出来ます。

膜タンパク質のC末端にRho1D4 タグを結合するように改変を行います。一旦タグを組み込んだ後は、Rho1D4抗体を結合したアフィニティレジンを用いてターゲットタンパク質を結合し、続いて過剰量のRho1D4ペプチドを用いてレジン中の抗体に競合的に結合させることにより、タンパク質を溶出します。これにより、例えばpH変化等による溶出と比較して温和な条件での溶出が可能になります。

図1

図.1 Rho1D4タグを付加した3回膜貫通型の膜タンパク質

Rho-1D4タグ(T-E-T-S-Q-V-A-P-A)が膜タンパク質のC末端に付加されています。

Rho1D4システム

Rho1D4エピトープと抗体のペアは1980年代にその有用性を見いだされ、Sepharose® ビーズに結合した抗体を用いてウシロドプシンの精製に用いられました。

それ以来、Rho1D4システム(タグ、抗体結合アフィニティマトリクス、溶出用ペプチド)はG-protein coupled receptors (GPCR)、ATP-binding cassette transporter、solute counter-transporterやtetraspanin membrane protein等の様々な膜タンパク質の研究に使用されてきました。


このシステムの優位性の1つとして挙げられるのは、抗体とエピトープ間の相互作用が非常に特異的であることです。エピトープ配列とペプチド鎖長は結合に重要な役割を果たします。

例えば、3番目のアラニン残基をグリシンに置換することは、化学的には単にメチル基を除去することを意味するだけですが、これにより結合ができなくなります。同様に、9アミノ酸からなるタグは抗体に強く結合しますが、2アミノ酸残基を除去することにより結合が妨げられます。これによりRho1D4に類似した配列に対する非特異的な結合を最小化し、高い純度を実現することが可能です。


2つめの優位性として、回収後のタンパク質の高い収量を実現することが可能な点があげられます。大腸菌、酵母、哺乳類細胞などの発現系がGPCRをはじめとする膜タンパク質のために最適化されてきました。

膜タンパク質の精製はRho1D4システムを使用した精製とそれに引き続いて実施されるゲル濾過等による溶出ペプチドの除去により行われます。様々な論文で数百グラム以上のタンパク質が得られたことが報告されています。


最後の優位性として、リガンド結合やタンパク質-タンパク質間相互作用等、機能に関する研究に使用することができる点が挙げられます。

例えばタグを付加されたABCA4をレジンに固定した抗体に結合させ、天然状態のリガンドへのアフィニティの測定を行ったり、ATPの添加によるリガンドの解離の測定が行われました。他の事例では、CD81がRho1D4抗体を用いてプレートに固定され、そのC型肝炎ウイルスenvelope E2タンパク質に対する親和性が単離された可溶化タンパク質の場合と同じであることが確認されました。

step1

1. 【結合】 Rho1D4タグ付加タンパク質をRho1D4抗体を用いてライセートから分離します。

step2

2. 【洗浄】 精製対象以外のタンパク質やその他のライセート構成物は洗浄により除去され、対象タンパク質のみがアフィニティレジンに結合された状態で残存します。

step3

3. 【溶出】 過剰量のRho1D4ペプチドはレジンに競合的に結合し、これにより解離した対象タンパク質は溶出液として回収されます。

文献で報告されたRho1D4システムを使用して精製された膜タンパク質の純度と収量の例

表.1 文献で報告されたRho1D4システムを使用して精製された膜タンパク質の純度と収量の例

Rho1D4システムを使用して精製された膜タンパク質の大部分はGPCRですが、トランスポーター等の他の膜タンパク質についても使用可能です。 (IAC: immunoaffinity chromatography; SEC: size-exclusion chromatography)