分子量分散
ここでいうポリマーとは、通常の定義通り、$\large n$ 個のモノマーが重合することによってできた化合物のことを指します。
ここで、$\large n$ の値が構成する個々のポリマー全てで一致していれば単分散とよび、$\large n$ の値が複数存在すれば多分散と呼びます。たとえば多分散のポリマーの場合、質量分析で 図1. のようなスペクトルが得られます。
ここで、$\large n$ の値がどれだけばらついているかを分子量分散度(Poly Dispersity Index、PDI; D、式.a)とよび、これらは重量平均分子量$M_{w}$(式.b)と数平均分子量$M_{n}$(式.c)を用いて定義されます。重量平均分子量は重量分率による分子量の平均であり、数平均分子量は分子の個数についての平均を表します(数式. 1)。
ここで$\large M_{x}$はポリマー分子の分子量、$\large N_{x}$はポリマー分子の数を表します。単分散の場合、個々のポリマー分子が全て同じ長さを持ち、重量平均分子量と数平均分子量が一致するため、Dは1となります。
多分散の場合、重量平均分子量が数平均分子量より大きくなるためDは1より大きくなります。
通常高分子の合成において高分子量になればなるほど分子量の分散は避けられぬ問題として立ちはだかり、医薬の分野でよく用いられるPEG、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリサルコシン(PSR)などでも、Dは1.05から1.2のものが主流です。しかしながら医薬として素早く認可を受けるということを念頭におく際に、分子量のばらつきは極力抑えられることが理想です。こちらで紹介しているのPASは遺伝子組み換えの技術によって完全に同一のものを合成しているため、分子量が大きくなっても、単一のものを得ることが可能となっています。