その他の基質

ルシフェリン

自然界ではアメリカホタル(photinus pyralis)が、子孫を残すパートナーを見つけるために、ルシフェラーゼの生物発光を用いています。

ルシフェラーゼ反応の結果560 nmでの黄緑色発光が生じます。

この反応には、酵素であるルシフェラーゼ、基質D-ルシフェリン、補因子ATPおよびMg2+と酸素を必要とします。

反応はいくつかのステップがカスケード状に起こることで成立します。

最初にルシフェリンのアデニル化が起こり、引き続いてオキシルシフェリンへの酸化が連続で起こります。

この反応から得られたオキシルシフェリンは、電子的に励起された状態にあります。

基底状態に戻る際に光子が解放され、低pHで赤(620nm)、中性pHで黄~緑色(550nm)を示します。

ルシフェラーゼの生物発光
図.1 ルシフェラーゼの生物発光

Egr - 1 LUCトランスジェニックマウスでのルシフェラーゼ活性
図.2 Egr - 1 LUCトランスジェニックマウスでのルシフェラーゼ活性
Egr - 1 LUCトランスジェニックマウスでのルシフェラーゼ活性。麻酔で眠らせたマウスに100μlPBSに溶解した6 mgのルシフェリンを腹腔内注射により投与。10分後にイメージング測定を行っています。

現代のバイオテクノロジーにおいて、このルシフェラーゼの応用は多岐に渡ります。


食品工業:食品の表面における微生物汚染の有無を明確にするルシフェラーゼ試験[1]
lucレポーター遺伝子システム: 遺伝子発現を検出可能な、非常に感度の高い手法(右写真)[2]
タンパク質-タンパク質相互作用の検出
細胞受容体活性の測定
腫瘍成長のモニタリング [3]

D-ルシフェリンおよびD-ルシフェリンの水溶性カリウム塩はルシフェラーゼの基質として入手可能です。

L-ルシフェリンのカリウム塩は、ホタルルシフェラーゼの阻害剤であり、ルシフェリル-CoAシンテターゼの基質です。


表.1 ルシフェリン関連製品

参考文献

[1] Hawronskyj, J.-M. und Holah, J., ATP: a universal hygiene monitor. Trends Food Sci. Tech. 1997; 8: 79-84. [2] Dussmann, P. et al., Live in vivo imaging of Egr-1 promoter activity during neonatal development, liver regeneration and wound healing. BMC Dev. Biol. 2011; 11: 28. [3] O’Connell-Rodwell, CE. et al., In vivo analysis of heat-shock-protein-70 induction following pulsed laser irradiation in a transgenicreporter mouse. J. Biomed. Opt. 2008; 13(3): 030501.

セレンテラジン

ルシフェラーゼはホタルのみではなく、多くの他の生物の体内中にも存在します。

別のルシフェラーゼグループはCoelenterata(腔腸動物)で最初に発見されたため、セレンテラジン(Coelenterazine)と名づけられました。

セレンテラジンは細胞透過性をもち、例えばイクオリン(Aequorin)、オベリン(Obelin)、Rluc(Renilla reniforms luciferase)、Gluc(Gausseria luciferase)など、多くの水生生物の発光タンパク質の基質になります。

セレンテラジンに似た物質であるセレンテラジンhのような分子を利用する生物も存在します。

セレンテラジンは酸素の存在下、発光タンパク質と反応しセレンテラミド(Coelenteramid)と二酸化炭素、および465 nmの波長の光子を放出します。

また、アポイクオリン(Apoaequorin)のcDNAで形質転換された細胞中において、細胞内のCa2+濃度の変化を検出するために使用することも可能です。セレンテラジンはまた強力な抗酸化剤としても機能します。

セレンテラジンの発光
図.3 セレンテラジンの発光

表.2 セレンテラジン関連製品

天然のセレンテラジンと比較して、セレンテラジンhは16倍、セレンテラジンHCPは190倍ほどの高い発光強度を有します。

さらに、セレンテラジンHCPは応答時間が速いのが特徴です。


他のセレンテラジン誘導体の用意もございます。お気軽にお問い合わせください。


参考文献

▷ Nakajima-Shimada, J. et al., Monitoring of intracellular calcium in Saccharomyces cerevisiae with an apoaequorin cDNA expression system. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1991; 88: 6878-6882. ▷ Rizzuto, R. et al., Rapid changes of mitochondrial Ca2+ revealed by specifically targeted recombinant aequorin. Nature 1992; 358: 325-327. ▷ Lucas, M. & Solano, F., Coelenterazine is a superoxide anion-sensitive chemiluminescent probe: its usefulness in the assay of respiratory burst in neutrophils. Anal. Biochem. 1992; 206: 273-277. ▷ Sheu, Y.-A. et al., Measurement of intracellular calcium using bioluminescent aequorin expressed in human cells. Anal. Biochem. 1993; 209: 343-347. ▷ Button, D. & Brownstein, M., Aequorin-expressing mammalian cell lines used to report Ca2+ mobilization. Cell Calcium 1993; 14: 663-671.

デカルボキシラーゼ基質

表.3 デカルボキシラーゼ基質関連製品

インドールの形成は、吸光度をモニタリングすることで検出が可能です。

これらの化合物は、芳香族酸に作用するジオキシゲナーゼをコードする遺伝子をクローニングする際にその発色基質として使用されます。

p-クミン酸分解菌株Pseudomonas putida F1とm-及びp-トルイル酸分解株Pseudomonas putida MT-2は、インドール-2-カルボン酸およびインドール-3-カルボン酸を色素として知られるインディゴ(Indigo)、インジルビン(Indirubin)、及びイサチン(Isatin)に変換します。

ジオキシゲナーゼは、この反応の第一段階を触媒すると考えられています。

またインドール-2-カルボン酸は、NMDA受容体へのグリシンによるグルタミン酸刺激増強の競合的アンタゴニストでもあります。


参考文献

▷ Eaton R.W., Chapman P.J., Formation of indigo and related compounds from indolecarboxylic acids by aromatic acid-degrading bacteria: chromogenic reactions for cloning genes encoding dioxygenases that act on aromatic acids. J. Bacteriol. 1995; 177: 6983-8. ▷ Yoshida T., et al., Novel reversible indole-3-carboxylate decarboxylase catalyzing nonoxidative decarboxylation. Biosci. Biotechnol. Biochem. 2002; 66: 2388-94.

ジヨードチロシントランスアミナーゼ基質

表.4 ジヨードチロシントランスアミナーゼ基質関連製品リスト

ジヨードチロシントランスアミナーゼと甲状腺ホルモンのアミノトランスフェラーゼの基質です。

生合成および甲状腺ホルモンの代謝の代替経路の中間体でもあります。


参考文献

▷ Nakano, M., Purification and properties of halogenated tyrosine and thyroid hormone transaminase from rat kidney mitochondria. J. Biol. Chem. 1967; 242: 73-81. ▷ Balsam, A., et al., Formation of diiodotyrosine from thyroxine. Ether-link cleavage, an alternate pathway of thyroxine metabolism. J. Clin. Invest. 1983; 72(4): 1234-1245.