PAS化:遺伝子組み換えによる新たな手法

生分解性、大きな流体力学半径を有し、薬理学上のあらゆるニーズにお応えすることが可能なPAS化技術のご紹介です。さらに、遺伝子組み換えによる新たな手法で分子量分散を持ちません。



プロリン、アラニン、セリンの配列からなるポリマーは、無秩序な立体構造により大きな流体力学半径を持つため、従来のPEG修飾による手法と同じ効果を得ることができます。また腎臓による排出を緩やかにする効果はもちろん、他の手法に比べ、数々の利点があります。

最初期のバイオ医薬に用いられているタンパク質は分子として小さく、非常に短期間で体外に排出されていました。PEGなどを化学的に結合し、流体力学半径を大きくすることで、糸球体毛細血管よりもサイズを大きくすることができ、体外への排出までの期間を臨床でも使用可能な時間に延ばすことが可能です(1.薬理作用を参照)。

しかしこのような利点がある一方、有効成分であるタンパク質と合成ポリマーを化学的に結合するこの技術はバイオ医薬に応用する場合には複数の問題が生じます。

系において理想的なPEGおよびその誘導体は高価な試薬である場合が多く、コストがかさみます。さらに実験で有効成分とポリマーを結合させる必要があり、その生成物を高い純度で精製するプロセスが不可欠となるため、さらにコストがかさみます。また反応中に副反応が起き、アミノ酸に余計な修飾が起こるといった可能性もあります。PEG自体が保存中に酸化して分解される一方、生分解性を持たないことから、長期的に用いることで液胞が生じるなどの重篤な副作用も生じえます。

PAS化は遺伝子組み換え技術で単一化合物が得られることと大きなサイズ排除効果によりこれらの問題を回避可能な生物学的なアプローチであり、強固な知的財産権によって守られた手法です。

PAS化を用いたバイオ医薬の開発の利点

▶ PASの配列は非常に安定したランダムな立体構造を持ち、大きな流体力学半径が得られるため、非常に大きなサイズ排除効果を有効成分に付与します。

▶ PASの持つ大きなサイズ排除効果により体外への排出を緩やかにします。単純なサイズ効果によるものであり、レセプターとの相互作用によるものではないため薬物動態特性への影響や副作用の心配がありません。

▶ PAS化はN末端、C末端および両方のいずれにも適用可能です。

▶ PASは様々な長さに調節可能です。薬理学上のあらゆるニーズにお応えします。

▶ PASは血清のプロテアーゼの分解に抵抗性を持つ一方で腎臓のプロテアーゼにより分解されます。

▶ PASは荷電した側鎖なしでも容易に水に溶けます。

▶ PASによって結合しているタンパク質の等電点が変わることがありません。

▶ PASには毒性がなく、また免疫原性を示さないことが動物実験で実証されています。

▶ PAS化は単純な遺伝子融合を利用しており、単一の融合タンパクの産生および精製工程のみを必要としポリマーの結合後の処理やその後の複雑な精製を必要としません。

▶ PASは低分子化合物、ペプチドおよびタンパク質とN末端で位置選択的に結合可能な単分散ポリマーとしても利用可能です。