誘導物質

概要

誘導物質は、1つないしはいくつかの遺伝子の発現を正に調節すると考えられている物質です。

遺伝子のオペレーター配列に結合することができないよう、リプレッサー分子に結合するものもあれば、活性化配列とより効率的に結合することができるよう活性化分子と結合するものもあります。

誘導は使用頻度の低い代謝経路では非常に一般的に起こる現象です。

希少な基質が存在すると、この基質を分解する代謝酵素のためにコーディングされている遺伝子が発現されます。

典型的な例では、基質それ自体が、代謝酵素の発現のための誘導物質であるため、新たに合成された代謝酵素が基質分子を分解した後は、誘導物質が存在しないため活性化のシグナルはoffになります。

天然基質を模倣しているが、誘発された代謝経路によって分解することができない人工的な誘導物質は“非代謝性”誘導物質と呼ばれています。

これらの物質は代謝されないため、活性化シグナルがoffになることを防ぎます。

IPTGとIPTGlcA

IPTGは非代謝性のβ-D-ガラクトシダーゼ誘導物質です。

大腸菌では、IPTGがlacリプレッサーのLacIに結合し、その立体構造を変化させることによって機能します。

この不活性化により、 lacオペロンのオペレーターへのリプレッサーの結合が阻害され、 β-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子であるlacZの抑制が解除されます。

IPTGは、β-ガラクトシダーゼ活性の誘導やlacオペレーター配列制御下にクローニングされる多くの組換え遺伝子の発現誘導を必要とするクローニング手順で一般に使用される試薬です。

Isopropyl-beta-D-thioglucuronic acidは非代謝性のβ-グルクロニダーゼ誘導物質で、大腸菌におけるβ-グルクロニダーゼアッセイの感度を非常に効率よく高めます。

1-O-メチルグリコシド

1-O-メチルグリコシドは対応するグリコシダーゼの効果的な誘導物質として知られています。OMe-α-D- Glc(GBB1251)はレクチン複合体形成の阻害剤として、またレクチンアガロースのカラムから糖タンパク質または他の糖質複合体を溶出するために使用されます。

参考文献

▶ Florez I.G., et al.., The specificity of induction of alpha-galactosidase from Saccharomyces carlsbergensis. Biochim. Biophys. Acta 1981; 674: 71-7.

▶ Biely P., Petrakova E., Novel inducers of the xylan-degrading enzyme system of Cryptococcus albidus. J. Bacteriol. 1984; 160(1): 408-12.

▶ Russell W.M., Klaenhammer T.R., Identification and cloning of gusA, encoding a new beta-glucuronidase from Lactobacillus gasseri ADH. Appl. Environ. Microbiol. 2001; 67: 1253-61.