代謝的薬物相互作用

薬物動態学的な薬物相互作用の大部分は、薬物の代謝中に主として2つのメカニズムで発生します。一方の薬剤が別の薬物の代謝を阻害することもありますし、反対に代謝を増加することもあります。これらの結果は、核内受容体の活性化を介して起こる薬物代謝酵素の誘導によるものです。化合物による受容体の活性化を評価することによって、薬物代謝の変化のように様々なプロセスの結果として薬物-薬物相互作用の可能性があるかどうかを予測できます。



酵素の誘導と阻害

薬物との相互作用とは、投与された薬物の活性に他の物質が影響を与えることをいいます。薬物の活性が増加/減少したりするだけでなく、単独では有り得ない影響を及ぼす場合もあります。

基本的には、薬物-薬物相互作用とは上記の相互作用が薬物同士で起こる場合を指します。しかし、相互作用は薬物-薬物間だけではなく、食品、ハーブ、アルコール、ニコチンのように薬物やほかの摂取した物質の間にも存在し得ます。

薬剤の主成分と相互作用しうる副成分の知識が欠けていることにより、誤用してしまうことにより健康被害を招きかねません。

薬物動態学的な薬物相互作用の大部分は、薬物の代謝中に主として2つのメカニズムで発生します。一方の薬剤が別の薬物の代謝を阻害することもありますし、反対に代謝を増加することもあります。これらの結果は、核内受容体の活性化を介して起こる薬物代謝酵素の誘導によるものです。化合物による受容体の活性化を評価することによって、薬物代謝の変化のように様々なプロセスの結果として薬物-薬物相互作用の可能性があるかどうかを予測できます。これらのプロセスの中には薬物の薬物動態の変化(とりわけ吸収、分布、代謝、及び排泄)を含む場合があります。

あるいは、同じ受容体に対するアゴニストとアンタゴニストの同時投与の場合のように、薬物相互作用は薬剤の薬力学的特性の結果として考えられることもあります。代謝的薬物相互作用に関与する1つの重要なシステムとして、シトクロムP450オキシダーゼを含む酵素系が挙げられます。この系は、誘導もしくは阻害によって影響されることがあります。

▶ 酵素の誘導:薬剤Aが、薬剤Bを代謝する酵素を多く産生するよう、刺激します。これによって薬剤Bの有効濃度が低下し、薬剤Bの有効性の低下につながる可能性があります。このことで薬剤Aの効果に変化は生じません。

▶ 酵素の阻害:薬剤Aは、薬剤Bを代謝する酵素の産生を阻害します。そのため、血中の薬剤Bの濃度が上昇し、過剰摂取の状態となります。

上述した例は、薬物の性質によって結果が異なります。

例えば薬剤Bがプロドラッグである場合、その活性型に到達するために酵素の活性が必要とされます。

したがって、薬剤Aによる酵素誘導は、活性型への代謝を増加させることによって、薬剤Bによる効果を増加させることにつながります。この場合、薬物Aによる酵素阻害は薬剤Bによる効果を減少させることになるでしょう。

一般的に言えば薬物間相互作用は、不十分なまたは予期しない結果が得られる可能性が高いため、避けるべき現象です。しかし薬物相互作用は、薬剤の同時投与に意図的に用いられ、その効力を発揮することもあります。

▶ 過去の例では、ペニシリンの量産がなされる前のペニシリンとProbenecidとの同時投与が挙げられます。Probenecidは、ペニシリンの排泄を遅らせるため、体内のペニシリン量はより長く保持されます。

▶ LevodopaとCarbidopaの同時投与(Carbidopa/Levodopaとして入手可能):Levodopaは、パーキンソン病のコントロールに使用されますが、代謝されていない状態で脳に到達しなければその恩恵を受けることができません。単独で与えた場合、Levodopaは脳の外部に存在する末梢組織で代謝され、効果が低下するだけでなく、副作用の危険性を増大させます。Carbidopaは、Levodopaの末梢における代謝を阻害するため、LevodopaとCarbidopaの同時投与によってより多くのLevodopaが未代謝の状態で脳に到達することを可能にし、また、副作用のリスクを低減します。

▶ 詳細チャートとしてhttp://www.hiv-druginteractions.org/に、HIVポジティブ患者に処方されるHIV薬の薬物相互作用や、プロテアーゼ阻害剤とNNRTI、NRTIおよびエントリ/インテグラーゼ阻害剤と他の薬剤との間の重要な相互作用の要約がまとめられています。

参考文献

▷ Pelkonen O. et al., Inhibition and induction of human cytochrome P450 enzymes: current status. Arch. Toxicol. 2008; 82: 667-715.

▷ Lipp E., Tackling Drug-Interaction Issues Early On. Genetic Engineering & Biotechnology News 2008; 28(12): 14-20.