ライゲーション反応

チオエステル合成用レジンおよびビルディングブロック

この樹脂はペプチドチオエステルの合成に使用することができます。TFA／DCMによるTrtの除去の後、アミノ酸を結合し、引き続きペプチド合成を行います。

完了後、ペプチドチオエステルを結合した樹脂をHFで処理すると、脱保護されたペプチドチオエステルが生じ、ライゲーション反応に使用できます。

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SEAレジン – ライゲーション反応で長鎖ペプチドを合成する際の画期的ツール

SEAレジン［SEA＝bis-(2-SulfanylEthyl)Amino］は、ライゲーション反応を利用したワンポットで行われる長鎖ペプチドの効率的な合成を実現する画期的なツールです。

概要

1. 第1のアミノ酸を、HATU(1-[Bis(dimethylamino)methylene]-1H-1,2,3-triazolo[4,5-b]pyridinium-3-oxid hexafluorophosphate)による活性化を使用してSEAレジン上に結合します。
   • アミノ酸が予め結合されたSEAレジンを利用することもできます。その後、ペプチドを、バッチ固相ペプチド合成のための従来のFmoc／tBuプロトコールを適用して合成することができます（手順1）。
   • 配列内のシステインについては、Fmoc-Cys(S- t Bu)-OH(FAA1575)を使用します。
2. レジンから全ての側鎖保護基が保護されたままのペプチドを切断し、C末端上にSEA基を持つ単純なペプチドとします(手順2)。
   • 得られたSEA-ペプチドは、引き続きライゲーションによる合成に使用することも、生成物として精製することもどちらも可能です。
3. 中性のpHの水中でN末端にCysを含有している第2のペプチド断片との間でSEAネイティブペプチドライゲーションを実行することができます。しかし、酸性水溶液中では、チオールが存在するとSEA部分はチオールによって容易に置換されて、対応するチオエステルペプチドが生じます（手順3）。

手順

手順1：SEA樹脂への結合

1. 樹脂（0.1mmol）をDCM中で60分間予め膨張させ、DMFで洗浄します。
2. Fmocアミノ酸（1mmol）、アクチベーターHATU（1mmol）およびDIPEA（3mmol）をDMF（2mL）中に迅速に溶解させ、すぐに樹脂ビーズ懸濁液に添加します。次に静かに2時間撹拌し、DCMで洗浄します。
3. 樹脂をAc2O/DIPEA/DCM（10：5：85）で2分間、次に20分間、2回キャップし、DCMで洗浄します。
4. DMF中の20％のpiperidineでの処理後、dibenzofulvene-piperidine付加物の吸光度を測定することにより結合をチェックします。

手順2：SEA樹脂への結合

1. DCMとジエチルエーテルで樹脂を洗浄し、洗浄後の樹脂を減圧下で乾燥させます。
2. 任意のペプチド合成機において標準的なHBTU/DIPEA条件を使用してペプチド鎖の伸張を行います。
   • 注： 分子内CysにはFmoc-Cys(S-tBu)-OHをビルディングブロックとして使用します。
3. 10mLのTFA/TIS/DMF/thioanisole/水（90：2.5：2.5：2.5：2.5）で3時間処理し、ペプチドを切断します。
4. 100mLのDMSO中にヨウ素（0.2mmol）を溶解させます。
5. AcOH/水（1：4）中にペプチドを溶解させます。ヨウ素溶液を添加し、30秒間静かに撹拌します。過剰量のヨウ素を不活性化するためにDTT（0.1mmol）を添加します。
   • 注： DTTは低いpHではジスルフィド結合を還元することができないので、Cys(S-tBu)と酸化されたSEAリンカーはDTT処理による影響を受けません。メチオニンまたはトリプトファンのような他の残基はこの短時間の要素への暴露の間には影響を受けません。
6. RP-HPLCにより直ちに精製します。

手順3：SEAペプチドを用いたNatural Chemical Ligation

1. 脱気したライゲーション反応緩衝液（0.1Mリン酸塩緩衝液、0.2M 4-メルカプトフェニル酢酸（MPAA）、0.2M TCEP＊HCl、pH7.4）を含むチューブに不活性雰囲気下で酸化されたSEAペプチド（1等量）とN-末端Cysペプチド（1.5等量）を溶解させます。ペプチドの最終濃度は約3～5mMになります。この混合物を不活性雰囲気下、37℃ で加熱します。
2. HPLCにより反応の進行をモニターします。このためは反応液から少量を分注し、これに10％TFA水溶液を加えることにより酸性化し、過剰量のMPAAを除去するためにジエチルエーテルで抽出します。
3. 反応の完了後、混合物を10％ TFA水溶液で酸性化し、ジエチルエーテルで2回抽出し、標準的な手順によって精製します。

SEAペプチドの優れた特徴

切断後、SEA残基を穏やかな条件（ヨウ素）下で酸化し、安定な1,2,5-ジチアゼパン環を形成させることができます。この段階で、酸化されたSEA-ペプチドは非常に容易に精製、特性決定、保存、または他の目的に使用することができます。

SEAを用いたワンポット合成では、3つまでのフラグメントの結合に精製を必要としません。

SEA-ペプチドを再活性化させるために、TCEP＊HClを用いて非常に穏やかな条件下で1,2,5-ジチアゼパン環を還元的に開環し、同時にN-末端のシステイニルペプチドまたはチオールと結合させて、ライゲーションペプチドまたはチオエステルを形成させることができます。

ペプチドチオエステルの合成

1. 酸化されたSEAペプチド（1等量）を、脱気した0.1Mのリン酸塩緩衝液、0.2MのTCEP＊HClおよび5％（容量%）の3-メルカプトプロピオン酸を含むpH4の溶液が入ったチューブ中で、不活性雰囲気下で溶解させます。ペプチドの最終濃度は約1～5mMとなります。この混合物を静かに撹拌し、不活性雰囲気下で37℃で加熱します。
2. HPLCにより反応の進行をモニターします。このために、少量の反応液を分注し、これに10％ TFA水溶液を加えることにより酸性化し、過剰量のMPAを除去するためにジエチルエーテルで抽出します。
3. 反応完了後（通常は、24時間後）混合物を10％TFA水溶液で酸性化し、ジエチルエーテルで2回抽出し、標準的な手順によって精製します。

3つのフラグメントをワンポットで結合

SEA-ペプチドを用いることにより、中間体の単離および精製を行わずに3つのフラグメントをワンポットで結合する(One-Pot Three Segment Ligation Strategy)事が可能です。

参考文献

▷ L. Raibaut, N. Ollivier, O. Melnyk; Sequential native peptide ligation strategies for total chemical protein synthesis; Chem. Soc. Rev. 2012; 41: 7001-7015; DOI: 10.1039/c2cs35147a.

▷ N. Ollivier et al.; Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2012; 51: 209.

▷ J. Dheur et al.; J. Org. Chem. 20117; 6: 3194.

▷ J. Dheur et al.; Org. Lett. 2011; 13: 14560.

▷ N. Ollivier et al.; Org. Lett. 2010; 12: 5238

製品一覧

SEA樹脂製品(100-200mesh)

SEA樹脂製品(200-400mesh)

固相におけるライゲーション反応

固相におけるライゲーション反応の概要は、下記のようになります。

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