アミド結合はペプチドのアミノ酸間の主な構成要素で、非常に多くのビルディング・ブロックとの組み合わせによる生物学的および化学的な手法により、無限に近い種類の新規の優れた特性を持つ材料だけでなく、生物学的な活性を有する物質の迅速な合成を可能にします。
しかし、ペプチド結合にはそのプロセスを妨げる酵素分解に対する不安定性うあ生体膜および生体内のバリアを構造を保ったまま通過できないという重大な欠点があり、研究開発を経て上市されるまでに壁として立ちふさがります。
ペプチドの優れた生物学的活性を保持、もしくは改善しながらこれらの欠点を克服する一つの方法に、自然界でも使用されてきたアミド結合のアルキル化があります。
より立体的に遮蔽されたアミド結合を形成することで酵素によるタンパク質分解に対する安定性を増大させます。
また一方で、極性を持ち、水素結合を形成するアミドプロトンをアルキル基に置き換えることで膜透過性が改善されます。
さらに、N-アルキル基は剛性を高め、立体配座空間を少なくすることで受容体への選択性を改善することができるため、望ましくない副作用を回避することができます 。
ペプトイドという言葉は、1990年代初頭にBartlettと共同研究者によって、N-置換グリシンのオリゴマーのことを指すようになりましたが 、これより以前にも例は存在していました。
もともとペプトイドは、単純なアキラルな試薬を用いてモジュラー合成により非常に多くの種類のビルディングブロックを用いて高速かつ効率的な合成を可能にするために設計されており、アミド結合の修飾によって酵素的安定性が増加し、立体中心が失われるため、ペプトイドは対応するペプチドよりも自由度の大きいコンホメーションを有します。
今日ではペプトイドという言葉は、N-アルキル化された単一または複数のアミド結合を有する任意のペプチドを含む化合物まで、より広い範囲に適用されており、N-メチルペプチド にまで拡大されています。
数多く存在するペプトイドおよびN-アルキルペプチドのアプリケーションは、多くの異なる治療分野での研究にリンクしており、これらの化合物の中で最もよく知られた例としては天然物シクロスポリンA(図2.)が挙げられます。
免疫抑制剤として1970年代から使用され、初めて心臓移植を可能したということでも有名ですが、おそらくそれ以上に有名なのは経口投与可能な修飾されたペプチドであるということです 。
ペプトイドは、抗菌性ペプチド(Antimicrobial Peptide, AMP)と同様の抗菌活性を有する上にペプチドに比べて高い安定性と生物学的利用能を有することが見出されており、またハンチントン病のような難病の潜在的治療薬としても期待されています。
革新的かつ安定した合成方法と改良された試薬や幅広いビルディングブロックが入手可能になったことで、最近ではこれらの化合物を用いた研究が発展するとともに、多くの関心が寄せられています(図2.、 )。
参考文献