クリック反応は通常有機合成が行われる有機溶媒中ではなく、水中でも効率的に進行するため有機溶媒中では変性等の問題を生ずる生体物質が関係する反応に最適です。
また反応性の高いペアとなる官能基間で選択的に反応するため、共存する生体分子があってもほとんど阻害されず、様々な生体分子の化学修飾に用いることができます。
反応に供されるアジドやアルキンは生体内には存在しない官能基であるため、予期しない副反応が起こりにくく、生体分子の合成や修飾に理想的な反応です。加えてアジドやアルキンはいずれも無極性で小さな分子であり、、観察系への干渉が小さいこと、求核性のアミノ酸残基や、酸性・塩基性いずれの条件に対しても比較的安定である点も有利です。
古典的なクリック反応と触媒フリーのクリック反応
上記のような特徴を持つため、様々な分野で応用されるクリックケミストリーですが、金属触媒を用いることからその応用の範囲が限定されていました。
Iris Biotech社では、クリックケミストリーの利便性を維持したまま金属触媒を用いない試薬、反応系の開発に力を入れています。
▶ 詳細はこちら
クリックケミストリーのアミノ酸への応用
変異体または修飾アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)を使用することで、対応するtRNAに非天然アミノ酸を結合させ、組み換え合成の間にポリペプチドまたはタンパク質中へ非天然アミノ酸を取り込ませることが可能です。
また、アジド化アミノ酸およびアルキン化アミノ酸両方のBocまたはFmoc保護誘導体が入手可能であり、これらを標準的な方法、例えばSPPSプロトコル等を用いてペプチド配列の中へ組み込むことができます。このことを利用すると、ペプチドの任意の位置に特異的に修飾を行うことが可能となります。
▶ 詳細はこちら
光架橋リンカー
パーフルオロアジドによる新規光アフィニティラベル法と架橋形成についてご紹介しております。
▶ 詳細はこちら
クリックケミストリーのスペルミン、アミンへの応用
ポリアミンは化学分解および酵素分解に対して核酸を安定化することや二次構造および三次構造の形成を促進すること、さらには細胞への取り込みを促進しすることが知られています。
また、スペルミンはグアノシンおよび8-オキソグアノシンの酸化損傷に関与し、デオキシリボシル尿素の形成を引き起こします。
これらの物質を、クリックケミストリーを介して導入するための試薬をご紹介しております。
▶ 詳細はこちら
クリックケミストリーを利用した薬剤デリバリー
タンパク質および他のバイオ医薬品には特異性と有効性の点で薬剤としての優れた可能性が有りますが、薬物動態学的特性はその弱点とされています。生体システムによって許容されるポリマー(PGA(poly(glutamic acid))、PEG(poly(ethylene glycol))、またはPAS(プロリン、アラニンおよびセリンのランダムポリペプチド)等)の付加は、バイオアベイラビリティおよび生体内分布を大幅に改善し、生体内で影響を受けやすい生体分子を影響を受けにくい薬剤に変えます。
一般的に用いられるPEG試薬はもちろん、ポリアミノ酸、デンドリマーのご紹介も行っております。
▶ 詳細はこちら
クリックケミストリーを利用した炭水化物誘導体
タンパク質および脂質への糖鎖付加は生命を支配する普遍的なプロセスです。糖の付加はタンパク質の折り畳みおよび安定化に影響を及ぼすとともに糖化合物はエネルギー貯蔵、細胞間コミュニケーションのための分子識別モチーフを介する細胞表面相互作用、そして細胞の構造的サポートや保護等の多数の生物学的効果を示します。
▶ 詳細はこちら
クリックケミストリーを利用したDNA修飾
クリック化合物は通常の生体物質とは反応しない特性があるため、オリゴヌクレオチド合成においても非常に有用です。前処理や精製の必要がない、または必要がある場合でも単純な過程で済む点は化合物のさらなる長所と言えます。
しかしながら、Cu触媒を用いる方法は銅イオンがDNAを損傷しストランドの切断を引き起こすたため、DNAの修飾のための用途では使用例が限られていました。
これらの問題が銅(I)安定化リガンド(例えばtris(benzyltriazolylmethyl)amineやTBTA[2])の使用によって克服され、CarellらおよびSeelaらは、非常に高い効率でアルキン修飾DNA核酸塩基に官能機を付与するためにCuAAC反応を使用できることを見い出しました[3-5]。
DNAクリック化合物を用いることで、広範囲に渡る応用が可能になります。
▶ 詳細はこちら