概要
ペプトイド、N-メチル化およびN-アルキル化キットによって、高価ないしは市販されていないビルディングブロックとアミノ酸を簡便に低コストで利用可能になります。特にN-メチル及びN-アルキル化キットは、例えばD-アミノ酸のような特殊なFmoc-アミノ酸誘導体の合成を可能にします。
反応キットには以下のような利点があります:
- 合成に必要で最適な品質です。
- 使いやすく設計されており、容易に入手可能です。
- 適切な量の試薬と溶媒で、使い切ることができますので余計な廃棄物が出ません。
- 試薬と溶媒を個別に購入するよりも低コストです。
更にキットの合成戦略および保護基は、Fmoc基を用いる標準的なペプチド固相合成で利用可能であり、ビルディングブロックやサブモノマーを修飾して、レジン上で例えば、分岐および環状ペプチドを合成することも可能です。
特にN-アルキル基またはアミノ酸側鎖を含むアミンは、お互いに直交の関係で切断され得る保護基を利用可能です。
酸に不安定なレジン上であっても、福山アミン合成に使用されるNs基によって、既知の合成戦略を用いてより複雑な分子が合成可能になります(図1)。
図示されている保護基の他にも、Boc基、Trt基、およびMtt基などの酸で脱保護され得る保護基を用いても直交性を拡大することができます。
4つの保護グループのFmoc基、(iv)Dde基、Alloc基およびNs基は互いに完全に直交な関係にあり、それぞれの脱保護条件で単独で脱保護できることが知られています。
唯一の例外は、Ns基とFmoc基が完全に直交な関係ではなく、ピペリジンによるFmoc基の脱保護ではNs基は脱保護されませんが、DBUによるNs基の脱保護ではFmoc基も脱保護されることが知られています。
また、Fmoc基もしくはAlloc基が同じ系中にある場合、Ddeおよび(iv)Ddeの脱保護条件は、標準的な2%ヒドラジンを用いるものではなく、それぞれヒドロキシルアミンもしくはヒドラジンにアリルアルコールを追加したものを用いる必要があります 。
これらの技術および合成戦略が融合することにより、腫瘍診断において臨床で評価を受けている分岐N-メチル化ペプチドであるPentixaforの発見や、ペプチド-ペプトイドハイブリッドにおけるコンフォメーション制限による、アフィニティを100倍にも増加させることに成功しています(図2、 )。
プロトコル10:Fmoc基存在下での(iv)Dde基の脱保護
- 25 g (1.80 mmol) のNH2OH・HClおよび0.92 g (1.35 mmol) のイミダゾールを5 mLのNMPに加え、溶解するまで超音波処理します。
- 5:1の体積比で希釈したNMP:DCM溶液(10 mL / レジン1 g)でレジンに結合したペプチドを3時間処理します。
- 反応溶媒を捨て、レジンをNMPで5回洗浄します。
プロトコル11:Alloc基存在下での(iv)Dde基の脱保護
- 6.5%ヒドラジンNMP溶液に200当量のアリルアルコールを加え、この6.5%ヒドラジン/NMP溶液で膨潤したレジンを5分間処理します。
- 反応溶媒を捨て、処理時間を10分間に延長して手順1を繰り返します。
- 反応溶媒を捨て、レジンをNMPで5回洗浄します。
参考文献